アンデシュ・ハンセン著,久山葉子訳,2020年11月に新潮社から出版された新書.なんでも「2021年いちばん売れた本(オリコン年間BOOKランキング)」だそうだ.

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精神科医である著者さえも「近年集中力が落ちており,本を読んでいる途中もついスマホに手を伸ばしてしまう」という記述が立ち読みで目に入り,共感して購入した.

僕も最近どうしても集中力が続かないのが悩みだ.なにか作業をしている最中にポッケからスマホを取り出してしまう.Twitterをある程度みて満足して,ホーム画面に戻った瞬間にまたTwitterを開く.さっきまで見てた内容を覚えていないからだ.画面をスワイプして,字と写真が下から上へ登っていくのを見るだけで満足してしまう.

この本では,如何にスマートフォンとそのアプリケーションが人類に悪影響を及ぼしてきたかを怖いくらいに教えてくれる.僕がスマートフォンをポッケから取り出すのは僕の意思ではない.末端価格数万のドラッグが脳に,生物としての本能に,直接語りかけてくるのだ.パスコードを入れろと.ブラウザを開け,情報を浴びろと.

人類はスマートフォンという窓を通じて世界を見るようになった.これは紛れもない事実だ.友達とご飯を食べるときでさえもスマホを机の上に出してしまう.果たしてその先に広がるのは本当に幸せなのか,一度立ち止まって考える機会になった.

この本の素晴らしいところは,悩みの原因をあなたのせいにしないことだ.生物としての仕組み,本能,ホルモン.その他のあらゆる方向からスマホにのめり込む理由を探る.「だってそういうふうにできてるんだもん.スマホも,僕らも.」と納得することで,冷静に読みすすめることができるし,自分を責めずに済む.

ちょっと不満な点は,実験の引用元の情報がないことだ.「これこれこういう実験があって結果はこうだった」と書いてくれるのは良いが,実験の細かいところが気になってしまう.例えば,普通のワード文章とリンク付きの文章を被験者に読んでもらい,その後に文章の内容を問う実験がある.この実験では,リンク付きの文章が方が内容を覚えづらいという結果が示されている.興味深い内容だからこそ,リンクの形式やその数などの条件が気になってしまう.せめて誰による実験なのかは知りたい.

目次

まえがき
コロナに寄せて―新しいまえがき
第1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた
第2章 ストレス,恐怖,うつには役目がある
第3章 スマホは私たちの最新のドラッグである
第4章 集中力こそ現代社会の貴重品
第5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響
第6章 SNS―現代最強の「インフルエンサー」
第7章 バカになっていく子供たち
第8章 運動というスマートな対抗策
第9章 脳はスマホに適応するのか?
第10章 おわりに
デジタル時代のアドバイス
謝辞
人生のバイブルに―訳者あとがき

この中にビビッと来るタイトルがあれば,そこだけ立ち読みしてみてほしい.気に入ればそのまま購入して,他の章も読んでほしい.

この本を読んでから,僕は寝るときにスマホを寝室の外で充電するようになった.